車を購入する際の支払い方法の一つとして、近年急速に利用者を増やしているのが「残価設定ローン」です。通称「残クレ」とも呼ばれ、「月々の支払いが安い」という大きなメリットがある反面、仕組みが少し複雑で、注意点もいくつかあります。
このコラムでは、残価設定ローンの仕組み、メリット・デメリット、そして利用する際の注意点を、初心者の方にも分かりやすく徹底解説します。
残価設定ローンの「仕組み」を理解する
残価設定ローン(残クレ)は、通常のカーローンとは計算方法が根本的に異なります。
残価(ざんか)とは?
残価とは、「契約満了時(数年後)の車の価値」をあらかじめ設定した金額のことです。簡単に言えば、「将来、その車を売るときの予想価格」を、先に差し引いてしまうということです。
残クレの支払いメカニズム
通常のカーローンは「車両価格の全額」に対して金利と利息がかかりますが、残クレは以下のような仕組みになっています。
- 残価を設定: 車両価格から、3年後や5年後の「残価(例:車両価格の30〜50%)」を引きます。
- ローンを組むのは「残りの金額」: 借り入れの対象となるのは、車両価格から残価を引いた「残りの金額」だけです。
- 月々の支払い: 借り入れの対象となる金額が少ないため、月々の返済額が通常のローンよりも大幅に安くなります。
💡 ポイント: 残価設定ローンは、契約期間中、残価の部分は支払わず、据え置いている状態です。
残価設定ローンの「3つの大きなメリット」
月々の負担が少ない残クレは、特に以下のようなメリットを求める人に適しています。
メリット① 月々の支払い負担が軽い
最大のメリットです。車両価格の全額ではなく、一部にのみローンを組むため、月々の返済額は通常のローンに比べて数千円〜数万円安くなります。これにより、ワンランク上の車種を選んだり、オプションを追加したりしやすくなります。
メリット② 数年ごとに新車に乗り換えやすい
残クレは、契約満了時に以下の**「3つの選択肢」**が用意されていることが前提の支払い方法です。
- 車を返却し、新しい車に乗り換える(残価の精算なし)
- 車を返却して、契約を終了する(残価の精算あり)
- 残価を支払って、車を買い取る(一括または再ローン)
特に「乗り換え」を選ぶ場合、手続きがスムーズで、月々の負担を抑えながら数年ごとに最新の車種に乗り換えられるため、車に飽きやすい人や、常に新しい技術(安全装備など)に触れたい人に最適です。
メリット③ 下取り価格の保証
契約時に設定した残価は、販売店がその金額を保証しています。もし契約満了時の車の市場価値が残価を下回っていても、利用者が差額を負担する必要はありません(※ただし、走行距離や車両の状態に条件があります)。
知っておくべき「3つのデメリットと注意点」
残クレには、月々の支払額が安い裏側で、いくつかの制約や注意点があります。
⚠️ デメリット① 最終的な総支払額は高くなる可能性がある
残クレは、残価の部分も含めた「車両価格全額」に対して金利が発生します。そのため、月々の支払いは安くても、最終的に支払う利息の総額は、通常のローンよりも高くなる可能性があります。
⚠️ デメリット② 走行距離や車両の状態に制約がある
残価設定は、「契約満了時に車を返却する」ことを前提としているため、車をきれいに、かつ過度に走行させないことが義務付けられています。
- 走行距離制限: 契約時に、月間1,000kmや1,500kmなど、総走行距離の上限が定められます。この上限を超過した場合、満了時の査定で**「超過金」**が請求されます(例:1kmあたり5円〜10円)。
- 車両状態の制限: 大きな傷やへこみ、目立つ内装の汚れ、違法な改造などは、**「原状回復費用」**として精算時に追加請求されます。
💡 注意! 契約期間中に車をぶつけてしまったり、走行距離の上限を超えそうな場合は、すぐに販売店に相談しましょう。
⚠️ デメリット③ 契約期間中の売却・乗り換えが難しい
残クレは、原則として契約期間中の途中解約や売却ができません。途中で手放したい場合は、残りのローン残高と残価を一括で精算する必要があり、非常に高額な出費となる可能性があります。
残価設定ローンを「賢く利用する」ためのチェックリスト
残クレは、自分のカーライフに合っているかどうかを見極めることが重要です。以下の点をチェックしましょう。
チェック項目 | YESの場合 | NOの場合 |
数年(3〜5年)ごとに新車に乗り換えたいですか? | 残クレが最適 | 通常のローンや一括払いが適している |
月々の支払い負担をできるだけ抑えたいですか? | 残クレが最適 | 支払総額の安さを重視するなら不向き |
年間走行距離が1万km未満ですか? | 問題なし | 超過金が発生する可能性が高い |
車のカスタマイズ(改造)をしたいですか? | 不向き(原状回復が必要) | 通常のローンや一括払いが適している |
車を最終的に自分のものにしたいですか? | 満了時に残価の一括支払いか、再ローンを検討する必要がある | 最初から通常のローンを組む方がシンプル |
まとめ:残クレは「車のサブスクリプション」に近い
残価設定ローンは、車を「所有する」というより、「数年間借りて利用する」という感覚に近い支払い方法です。
- 向いている人: 新しい車に常に乗りたい人、月々の出費を抑えたい人。
- 向いていない人: 走行距離が多い人、車を改造したい人、一つの車に長く乗りたい人。
契約する前に、必ず「総支払額」「走行距離制限」「満了時の選択肢と精算条件」をしっかりと確認し、ご自身のライフスタイルに合った支払い方法を選んでください。










最近よく聞くけどどう言う仕組みなのかしら?